| 日立グループ館 (鉄骨造スペースフレーム円形ピロティ) |
(2002/04/09)

■2002/03/14 デカール用原稿の館名ロゴを製作
■2002/03/24 挽物の製作
■2002/03/28 挽物の修正
■2002/03/29 鉄骨支柱穴開け他
■2002/04/02 円盤下面に 階段の開口部を切削
■2002/04/05 組み立ててバランスを見る
■2002/04/07 実は左右非対称!
■2002/04/08 踊場の再検証
■2002/04/09 北側階段の修正
2002/03/14
デカール用原稿の館名ロゴを製作
これは縮小版 |
2002/03/24
挽物の製作

こう言った形状の造形は 旋盤無しでは 到底考えられません
しかし、旋盤さえ有れば 何でも出来ると思って、何も知らない人が 旋盤を購入すると
きっと 使い物にならなくて 絶望する事でしょう…
実際に テレビにも出た あるプロモデラーが 購入した旋盤に 手を余すのを 見ています
皆さん 錯覚しているようです…旋盤は 円筒しか削れません
オプションのテーパー送りが付いていても 円錐が削れるだけです
自動送りが 付いていたら ネジが 削れるようになります
NC数値制御のコンピュータ付き旋盤なら…もうちょっと楽になって 球面も削れるでしょうけど
個人には ちょっと買えません
工業の世界では 旋盤で 製品を 量産する時には、専用の刃を作り
その刃を当てるだけで 複雑な形が出来るようにします
しかし、一品物の原型製作や試作では 如何するか…
ひとつは 適切に部品分割して 個々の形状を 単純化して
旋盤の標準セットの刃で 加工可能なようにします
もうひとつは 何工程も セッティングを 繰り返して
必要ならば 刃の代用品を 流用して 臨機応変な加工をします
以下、私の手順を 恥ずかしながら お見せいたします(;^_^A


エレベーターシャフトと 基礎の 挽物の製作


旋盤のバイス(コレットチャック)を 外爪から内爪に交換
本体上部の製作を連続写真で見ましょう













- 外パスで 外径を 設定
- 自動送りで 必要径まで 縁を 落します
- 長さ(日立では高さ)を 刃でケガキ
- 中心を貫く穴を開けて 部品接合に備えます
- テーパー送りを 強引なセッティングで 雨勾配の部分の削り出し
- テーパーのセッティングを 微妙に変えて 雨樋溝の部分の削り出し
- テーパーのセッティングを 大きく変えて 斜めになった肩の部分の削り出し
- アールを フリーハンド(木工旋盤の手法)で 削り出し
- コーナーを コーナー刃で 彫刻
- 内刳り刃で 穴を広げて エレベーターシャフトの 勘合穴の部分の削り出し
- 内刳り刃で 展望台床面の窪ませ
- 下面円盤との接合面の削り出し
- 切り離し
以上、ここまでに 7種類の刃先が交換して使われ、15回近くのセッティング変更が繰り返されています
出来た部品と 組み上がりの状態


2002/03/28

挽物の修正
実物の写真とかと 見比べているうちに 修正点を 発見し、再度 旋盤での加工をする必要が出た
しかし、そのまま旋盤に取り付けると爪で 縁(ふち)のディティールが壊れてしまいます
では 如何するか…
ここで 貫通穴を 一見必要以上に大きくして 太いボルトで 固定した意味が 発揮されます
M6のボルトと高ナット、そして鍔に真鍮の円盤を 用意します
それらで 咥え代のシャフトを 作ります


さて、そのまま旋盤に取り付けても ボルトナットのガタから 芯が出ません
そこで ダイヤルゲージで 測定しながら ボルトナットを 緩めて調整して締めるを 繰り返します
±1/100ミリまで 芯出しを 追い込み妥協しました…
あと1/100ミリは ボルトを半締めして 木槌で コンと叩けば追い込めますが
そうすると縁のディティールが潰れてしまいます
手で押さえての調整では「コンナモノ」かと諦めました
でも ±1/100ミリの誤差は 普通の人の肉眼では 解らないと思います

気になったのは 肩の丸みの不足と 展望台床面の窪みの不足(0.4ミリ不足)だったので
さくさくっと 直します


修正完了

2002/03/29
鉄骨支柱穴開け他
基礎部分の穴あけ
ダイヤルゲージのマグネットスタンドを流用して固定






円盤下面に穴あけ







フライス盤でエスカレーター溝の切削



展望台床に穴あけ

2002/04/02
円盤下面に 階段の開口部を切削



2002/04/05
組み立ててバランスを見る
プラ板細工で エスカレーターと階段を作って組み付けてみた




2002/04/07
実は左右非対称

みどり館では 塗装で難儀しましたが、今回は のっけから考証で悩みました
(今回は 塗り分けも簡単で 解り易い単純な形だと高を括っていた)
この形ですから 東西に架かるエスカレーターを 中心線に
南北で 左右対称(線対称)だと思っていましたが
くにっけさんから図面をいただき、詳しく見ると…
南北で 左右非対称で 構造各部は 約5度半傾き(注:01) 3階と2階の平面図
螺旋階段は 南北で 中心からの距離が 異なりと(注:02)
複雑怪奇な事実が 解ってきました…
鉄骨の構造(注:03)から 原因の推測ができますが ▼構造を構成する鉄骨の骨組み模型
検討用模型(注:04)の写真を 見る限りでは 整然と左右対称なので
デザイナーは 左右対称で 計画したものの
実際の施工では 特殊な構造的制約によって 左右非対称に
なったようです…
とは言うものの…本物の写真を見ても、組みあがった私の模型の写真を見ても
左右非対称には 見えないかも知れません
また、同じ図面を見ても、人によっては 左右非対称に気付かないかも知れません
では 部品状態で 見てみましょう
(予備知識が無ければ 失敗して原型が歪(いびつ)だと 思われてしまうでしょう)
先ずは これは 展望台(スカイロビー)の屋根を外したようすです
(如何です?…歪でしょう?)
この原因は 鉄骨の位置に起因します
建築物としての みどり館の挑戦は
「地下1階 地上1階 鉄筋コンクリート、40面FRP鉄骨ドーム建築」の実現にありましたが
(ドーム=部材の圧縮力だけで屋根を架ける方法の一つで、普通半球形の屋根となる
また、見た形が半球形になっている屋根や天井を指す)
コレに対して 日立グループ館は
奇抜な円盤の形でも、40メートル エスカレーターでもなく
「地下1階 地上4階 鉄骨立体トラス、円形張出し床ピロティ建築」の実現だったのです
(ピロティ=建築家ル・=コルビュジエが提唱した近代建築の手法で、
建物の一階を柱だけで支えて開放し、二階以上の部分に部屋を設けるもの)
長大な張出し床こそが 建築物としての日立グループ館の真骨頂だったのです
↓建設中の写真から、中心部の8本の支柱が 上下に貫通した日立グループ館の背骨です
この8本の支柱から 放射状に 8本の主梁が延びています↓
(8本の支柱の中間から 更に8本の副梁も延びています↓合計16本)
エスカレーターは 部分的に 円盤の一部を切り欠いてはまり込みますが
構造を支える鉄骨を 切断する訳には ゆかないので
中心線を避けて設置する必要があるのです↑
この事は 解体中の写真からも確認できます↓
(↓の位置が エスカレーターの支柱です)
(↑画像掲載承諾/かっぱさん、かちもさん)
なお、中心線を避けてエスカレーターを設置した角度は 約5度半傾いていますが
鉄骨の位置関係から算出すると 厳密には 理論値で 5.625度(360度÷64)になります
次ぎに、円盤下面について 部品で見てみましょう
この状態で階段の開口部の位置関係を見ると 酷い歪ぶりです!
日立グループ館は 基礎部分の数倍の上部構造を持つ特殊な建築です
皆さんの身近な建物で 基礎より数倍も大きな建築物は 有りますか?
普通は 基礎より数倍も大きくはない、安定した建物だと思います
これはもう 例えるなら静止した一本足のコマ(独楽)です
重量バランスが 大きく崩れたら 倒れてしまいます
ここに 主梁鉄骨の位置を記入すると 規則性が 見えてきます
一点で支える安定した形は 普通には 左右対称ではなくて回転対称(注:05)に なっています
出口階段のaとa'は 鉄骨の隙間を利用して この回転対称の関係(注:06)に なっています
螺旋階段cは この法則から外れますが…
構造設計者の考える理想では 北側(写真では左側)の螺旋階段は
本来b'の位置に 設置したかったと思います
しかし それでは 北側が 外観デザイナーの考えとは 一致せず
出口階段と螺旋階段を 鉄骨を挟んで配置したのでしょう法則との不一致も 出口階段と螺旋階段を比較した場合、螺旋階段は 明らかに軽量そうです
また その自重も中心の支柱で支えられて
円盤側には 荷重が掛かっていないのではないかと想像します
そうすると 鉄骨の位置さえ避ければ
螺旋階段は 円盤のどの位置でも貫通して設置できたのではないでしょうか?
ところが…
ここまで模型製作が 進行したところで、くにっけさんから 新たな問題資料写真が届いてしまいました
理論上では 南北の出口階段は 重量バランスを 安定させる為に
同一の形式でなければならないはずなのに…
↑このように 水平な踊場の部分の長さ(面積)が 明らかに倍は異なります
いや〜とことん悩ませてくれますね〜
考えた末に 私は この踊場の延長部分は 見せかけの「ハリボテ」と推理しました
2階の平面図(注:07)との繋がりを考えると踊場の延長部分は スタジオの下にもぐり込み
スタジオと干渉します、これは不自然です
模型を回転台(フィギュア製作に使うターンテーブル)に乗せて全周の印象を観察したところ
北側の螺旋階段を出口階段と鉄骨を挟んで配置したために(注:08)
全体として北側の階段セットが 西に飛び出して見えるので
視覚的な補正のために 東側を延長して 視覚的なバランスをとったのではないかと考えました
でも まともに構造体を延長すると 重量バランスが崩れるので
実は見かけだけの「ハリボテ」ではないか?…「ハリボテ」ならスタジオと干渉しても実害は無い…
そう 想像しました
2002/04/08
踊場の再検証
先の「ハリボテ」説ですが…ど〜も 説得力が弱い(;^_^A
それで 資料をもう一度読み返していたら…
> 設計当初心配した偏心荷重による影響も、外周に10tの
> 集中荷重による載荷試験の結果、
> 計算値とほぼ同じ剛性をもつ結果を得ている。
の記事から 10トン程度なら 重量バランスの許容範囲なのかと再認識する
そう考えると 重量バランスを 安定させる為には 完全な同一の形式の必要はないのではないか?
準同形式なら 構造体を延長している可能性も高いようです
4ドア セダンの乗用車が 2トン弱なので 10トンだと 6台くらいの重さでしょうか
踊場の延長部分は それよりは軽そうです
ちなみに 上部重量は 1500t との記載もあり、10tの載荷試験は 1%にも満たない値です
1500t って事は 駆逐艦並の重さなのですねぇ〜
平面図でスタジオと干渉する問題も 地上から2階床面までの高さが
通常の4階ぐらいはあり、踊場の位置でも 人が通れるクリアランスはあるようです
そ〜すると「踊場の延長」理由は 何でしょう?
そう考えながら模型と実物写真を 見比べていたら…
「あっ…これだ!」と より説得力の高い原因を見つけました
私の模型では 北側の階段の最終段と螺旋階段とのクリアランスが狭く(注:09)
通行の障害が起きそうです
ところが 実物写真では そこそこの距離があります
当初は 北側の螺旋階段の穴あけを しくじったかな?とも思っていましたが
2階平面図から割り出すと そんなものになります
「オカシイなぁ〜」と思っていましたが もしも 北側の階段の最終段を 東に移動させたら…
踊場を延長する必然性が出てきますこの事を 図解してみましょう
南側の階段は 階段全体の半分が 円盤内に埋没しています
埋没部分は 南北とも同型です(南側の階段を図解)
北側の階段も 階段全体の半分が 円盤内に埋没しています
埋没部分は 南北とも同型ですが 露出部分が 踊場の延長分だけ
螺旋階段より距離が 離れるのではないかという推理です(北側の階段に図解切替)
南側の階段を図解⇔北側の階段に図解切替(←クリックすると図が切り替わります)
この推理は かなり説得力があります
視覚的なバランス説よりも 切羽詰った必然性に迫られた感じがします次ぎの出口階段に繋がる南北のデッキの非対称性については
鉄骨が直接の原因ではなく敷地との兼合いがありそうなので
敷地部分の製作時に説明したいと思います
2002/04/09
北側階段の修正
推理に従って踊場の延長と階段下段の移動をしました
南側と見比べてください


散々苦労した階段も
一円玉より小さくて…何やってんだかなぁ〜

↓会場内での
日立グループ館の位置
